
食品サンプル展の見どころポイント!その⑤
こんにちは!7/9まで開催中の開館25周年記念特別展「食品サンプル展~さわって、撮って、科学する!~」の担当学芸員の岩下です。
本展も、いよいよ残すところわずかとなってしまいました。
本展の紹介ブログは今回で最終回になります。そこで、担当者として気になっていた、食品サンプルの「見せ方の技術」の見どころポイント!を2つご紹介します。
1つ目は、おいしさを左右する料理の温度感が伝わる【温度表現技術】について注目してみます。
こちらの「生ビール」の食品サンプルをご覧ください。さて、左右どちらのビールを飲みたいと感じますか??
まず、左側のビールをよく観察してみましょう。
実は、こちらは昔の表現のビールです。本物のビールの透明感をかなり忠実に再現しています。
この透明感は、ビールを醸造される職人さんのこだわりであり、食品サンプルにもこのビールの透明感が求められていたそうです。
ビール醸造の職人さんと食品サンプルの職人さんのこだわりの結晶ともいえる作品ですね。
右側のビールはどうでしょう。
ん?ビールの透明感は、ジョッキの水滴でわかりにくいですね。でも、とにかく暑い時に飲みたい!と思いませんか?
そう、この水滴があることで冷え冷え感が伝わってくるのです。キンキンに冷えたビールのおいしさを想像させる温度感がみごとに表現されています。
食 品サンプルは、冷え冷え感だけではなく、熱々感も上手に表現されています。
こちらの「餃子」の食品サンプルをご覧ください。
羽根つき餃子をつくっているようですね。水溶き片栗粉(小麦粉?)を回しかけて、グツグツ泡が出ている様子がわかります。
もちろん、このフライパンは熱くありません。注目ポイントは、グツグツ感が伝わるこの“泡”です。
食品サンプルでどうやってこの大小さまざまな“泡”をつくって再現しているのでしょうか??
フタにつく水滴もリアルに表現してあります。熱々の料理を作る際に、フタをしたら必ず見られる光景ですよね。
本当に熱いんじゃないか?と思わず錯覚してしまうほど、熱々感が伝わる、みごとな表現技術です!
そうそう、 本展ではこんな作品も展示しています。
熱々の鍋焼きうどんが氷漬け!?食品サンプルならではの不思議で楽しい表現ですね!!
2つ目の表現技術は、食品サンプルといえばこれ!【持ち上げ技術】です。
1度は見たことがある?昔からよくある持ち上げナポリタン。
昭和の頃からの持ち上げ技で、麺の中に針金などで支柱を入れてフォークを支えているそうです。
画像だと見分けがつかないほど本物そっくりな食品サンプルでも、フォークが宙に浮いていることで何とか食品サンプルだとわかります。
さて、ここからは、本展の「持ち上げ系食品サンプル画像集」です。どうやって持ち上げているのかを併せてお考えください。
「生卵」は、黄身を持ち上げることで、卵の新鮮さも伝わるので秀逸です。支柱を透明感ある白身にしているのもナイス!
最後の「チーズダッカルビ」は、とろっと伸びたチーズだけでお肉と韓国箸を支えています。何で支えることができるのでしょう??
持ち上げの支柱となる素材のかたさや、持ち上げるものの重さや重心などのバランスがよく考えられているようですね。それにしてもすごい技術です!!
料理をリアルに再現することだけでなく、お客様が「食べたい!飲みたい!」と思わせるような表現技術も今の食品サンプルに求められているんですね。
本展では、食品サンプルがレストランなどのお店だけではなく、医療現場や食育指導などで活用されている事例も展示で紹介しております。
「食品サンプル」を見て味わって、触って感じて、撮って楽しんで、日本が誇るものづくり技術を堪能していただけますと幸いです。
ご来場お待ちしております。

岩下 貴文
学芸員の岩下貴文です。来館者の反応を楽しみにしながら、日々、様々な分野の企画展の企画を行っています。 自覚のない熊本訛りをよく指摘されます。 サイエンスショー、科学教室、出前講座、展示室内などで見 かけるかも!?その時はそっと声をかけてくださいね。 面白い科学ネタ情報お待ちしています。